女優、吉永小百合(61)が6月21日に朗読CD「第二楽章 沖縄から『ウミガメと少年』(野坂昭如作)」を発売する。戦争原爆詩を朗読した前2作以来7年ぶりで、「広島、長崎編の後、ずっと心にひっかかっていた」という沖縄への哀悼と平和の願いを込めた。全国を回るボランティアの朗読会は今年で20年。25日、都内で取材に応じた小百合は「入れ歯になるまで読み続けます」と決意を口にした。〔写真:「ウミガメ水族館にも行ったんですよ」。沖縄編に込めた思いを真剣に語っていた吉永小百合から笑みがこぼれた〕
自主制作を覚悟で作った「第二楽章」「(同)長崎から」。この2枚をリリース後、小百合の頭から、『沖縄』が離れることはなかった。
「沖縄の地上戦はあまりにも悲惨で、どう表現していいのかわからなかったんです」。完成したCDを手に語り始めた。
小百合と沖縄の関わりは昭和43年の映画「あゝひめゆりの塔」にさかのぼる。ひめゆり部隊の女学生を演じたが、「つらすぎてパニックになり、過剰な演技をしてしまって。沖縄の人たちのもっと深いところにある悲しみを伝えなければならなかったのに…」。同年、慰霊碑を参拝したものの、その後は「安易な気持ちでは行けない」と再訪をためらってきた。
40年近く、後悔の念を引きずってきた小百合の背中を押したのは、一昨年1月、沖縄・那覇市で開催した主演作「北の零年」の上映会だった。
明るく、温かく小百合を迎えた地元の人々のためにも、「沖縄戦のことをきちんと語ろう」と決意。その後の行動は素早かった。「子供たちに聞いてもらうため」、朗読の題材を「悲惨すぎず、メルヘンの部分がありながら、大切なことを訴えている」と野坂氏の戦争童話に決定。前2作のジャケット画を描いた男鹿和雄氏に再び依頼し=写真左=、今年2月にはイメージを膨らませるため、かつての激戦の地を訪れた。
こだわりは音楽にも。両手を広げながら「こーんなに沢山の沖縄音楽のCDを聴いたんです」と苦笑い。世界的に活躍する石垣島出身の歌手、大島保克(36)と夏川りみ(32)による島唄を選んだ。
昭和20年、東京大空襲の3日後に生まれた小百合にとって、朗読は“宿命”。「次の戦争が始まらないために、自分にできることをする。わたしにとっては、それが朗読なのです。入れ歯になるまで、声が出る限り、読み続けます」。
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