日本の時代劇を代表するスター、「中村錦之助」の名跡が35年ぶりに復活することが14日、分かった。映画「宮本武蔵」、テレビドラマ「子連れ狼」などで知られる故萬屋錦之介さんの若き日の芸名で、歌舞伎の名門「萬屋」にとっては欠かすことのできない名前。「二代目錦之助」を襲名するのは、若手二枚目の中村信二郎(46)。来年4月に東京・歌舞伎座で襲名披露を行う予定だ。
「中村錦之助」の名前は、時代劇の歴史に燦然(さんぜん)と輝いている。今は亡き萬屋錦之介さんが4歳で初舞台を踏み、その後、30年以上名乗り、スターの足場を築いた芸名だ。「錦之助」は、本名の「小川錦一」の一字を取ったもの。歌舞伎の名門、「萬屋」の一員に生まれながら、映画の世界に飛び込んだ。父の三代目時蔵から「映画に行くなら歌舞伎を辞めろ」と引導を渡されたのは有名な話だ。
その後、映画「宮本武蔵」「丹下左膳」など数々のヒット作を飛ばし、一代で「錦之助」の名前を世に知らしめた。72年には屋号の「萬屋」を姓に「萬屋錦之介」に改名。94年6月には再び歌舞伎に戻り、河竹黙阿弥の「極付幡随長兵衛」を演じ話題となった。
来年3月は、その錦之介さんがこの世を去ってちょうど10年。1年ほど前から、関係者の間から「錦之助の名前をこのままにしておくのはもったいない」「二代目を誰かに継がせたらどうか」などの声が上がっていた。
華やかで大きな名前を継ぐことになった、中村信二郎は錦之介さんのおい、売れっ子の中村獅童(33)とはいとこ同士になる。華やかな初代に負けない二枚目で、スター性も十分。歌舞伎役者としても実力を備えており、松竹の永山武臣会長もすでに了承済みという。
襲名披露は、来年4月、歌舞伎座で行われる予定。演目は「~幡随長兵衛」「一心太助」など、ゆかりの芝居になりそうだ。近く正式に発表される。
◆中村 信二郎(なかむら・しんじろう)本名小川信次郎。1960年(昭35)9月29日、東京都生まれ。64年7月、「宮島のだんまり」の梢で初舞台。88年にはスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」などにも出演、最近は「義経千本桜」の小金吾、「大石最後の一日」の磯谷十郎左衛門など。
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