女優の桃井かおり(54)が長編映画の初メガホンを執った「無花果(いちじく)の顔」(今冬公開)の撮影を終えた。桃井が書いた短編小説が原作で、ある4人家族の姿を長女(山田花子)の視線から描いたもの。ロサンゼルスと東京を行き来する多忙な桃井。「本当は監督する気はなかったのよ。ロスでのオーディションもいい感じで、今は女優に集中したい。でも、作ったからには海外映画祭で賞を」と賞取り宣言した。
「無花果の顔」は桃井が39~40歳の時に書いた短編小説の連作が原作。製作会社から映画の企画を探していると持ちかけられたときに提案した。これまで短編映画の監督はあったが、長編映画は初めて。
「監督する気はなかったのよ。映画の中身について、いろいろ具体的に話したのだけど、いまいち分かってもらえなかった。だったら、自分が撮った方が早いと思ったの」
脚本は一日で書き上げた。「(製作サイドから)ホンが欲しいって言われたけど、『書いても無駄よ、どうせ現場で変わるから』と言ったの。でも、どうしても必要というから」
事実、脚本はたたき台。現場の雰囲気に合わせて変える桃井流。撮影は「スタート」のかけ声もカチンコもない。首からぶら下げた笛を吹くのが合図。「どなってたら、声がかれちゃったのよ」と苦笑。「でも、今は技術的にもカチンコって、いらないのよね。あれは助監督の自己満足。演技するときに、その前で打たれたりすると邪魔なのよ」
監督業については「止まっていると、すぐに『監督!』って声をかけられる。眠らせてもらえない、という感じかな。瞬発的な判断力を要求される。それも、そんなに苦じゃないけど、私は女優の方が好き。それに、今は女優としての時間を優先させたい。エージェント(大手のウィリアム・モリス社)も決まって、オーディションでも、いいところまでいっているのよ」と話す。
しかし、半端を嫌う桃井らしく、作品の出来栄えには自信を持っている。米俳優ロバート・レッドフォード(68)が主催するインディペンデント映画の祭典「サンダンス映画祭」への出品を考えている。「やるからには勝たないと、ね。賞を狙いたい」と力を込めた。
◆「無花果の顔」主演は山田花子
「無花果の顔」では山田花子(31)が映画初主演。プロ、アマ問わずのオーディションで選んだ。「何も染まっていない人がいいと思って。私としては一度、本気で演技の世界を知ってもらって、また、元の世界に持ち帰ってほしい」。桃井が母役、ミュージシャンのHIROYUKIが弟役、ほかに高橋克実、岩松了、石倉三郎が出演。
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