「名優 渥美清 特集上映」が4日、東京・築地の東劇で開幕した。1996年に亡くなった渥美清さんの没後10年を記念して命日に開幕、14日まで出演の13作品を上映。寅さんシリーズの山田洋次監督(74)とマドンナを代表して女優・竹下景子(52)が舞台あいさつを行った。劇場は立ち見が出る熱狂ぶりで、改めて寅さん人気のすごさを物語っていた。
まるで話題の新作の封切り日のように、劇場が熱気で包まれた。435人収容の東劇は立ち見が出るほどの超満員。「名優 渥美清 特集上映」の第一弾として、「男はつらいよ」(1969年)が上映されたが、現代に息づく“寅さん”を大スクリーンで見ようと数多くのファンが詰めかけた。
96年に亡くなった渥美さんの没後10年を記念し、命日に開幕。年配客が大半を占めたが、若い世代の観客もちらほら。舞台あいさつに立った山田洋次監督も感慨深げだ。「渥美さん、見てほしい。この会場を…」と天国にいる寅さんに呼びかけると「10年はあっという間。この間にいろんなことが日本人にとってあった。この国がいい国になったのか、よくない国になったのか。だんだん住みづらい国になったと思う。渥美さんと語り合いたい」と静かな口調で話した。
歴代のマドンナ代表として出席した竹下景子は「渥美さんは人を楽しませる方でした。撮影の合間に気遣ったり、私たちが楽しくいられるように、渥美さんならではの思いやりがありました」と懐かしむように話した。
東劇と通りをはさんで向かいに建つADK松竹スクエアのエントランスでは、「名優 渥美清写真展」が同時に開幕。映画の場面写真や撮影の合間の素の表情など、20点のよりすぐりのものが飾られた。山田監督は「寅さんは今でいうと典型的な“負け組”の代表。でもダメな男に対する愛情が支えている。役に立たない人間などいない。若い人が見て、『面白かった』といわれると安心する」と社会的な事件が渦巻く現代こそ、見てほしい作品と力説した。
新作は木村拓哉主演の「武士の一分」(12月公開)が控えるが、「渥美さんにほめられる映画を作りたいな、と思ってきた。それは変わらない」ときっぱりと語った。
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